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【終末後】

■蛇足1−虎口は3度ある−

どこかその辺。
普通の蕎麦屋。
昼はだいぶ過ぎていて、客はまばら。
大和田と、雅楽が、向かい合わせに座って、思い思いに食事を取っている。
大和田は天ぷら、雅楽はざる。

半分ほど食べた所で、大和田が口を開いた。

「…雅楽君よ、これFHの情報なんだけど、実は、とある海域で、重石をつけて沈められた棺が発見され」

言葉の途中、何かを察知した大和田が、そばの鉢を素早く持ち上げた。その前で、雅楽が盛大にむせ、蕎麦の欠片がテーブル中に飛び散った。何度もむせ返って涙目になりながらも、ようやく雅楽が口を開いた。

「……DIOかな?」

「そうかもしれんし、お前の知り合いかもしれん」

過呼吸から開放された後も、明らかに挙動がおかしい雅楽が、お絞りをたたんでテーブル上を拭こうとしてお茶をひっくり返しそうになったりするのを、大和田が押しとどめた。店員さんを呼んでテーブル拭いてもらって、一通り落ち着くと、大和田はおもむろに口を開いた。

「……年代はかなり新しいというか、ここ数年。ところが、沈めた経緯が皆目わからない。記録もすっぱり抜けていて、どんな手段を使ってもまったく掴めない。まるで、棺に関わった人間なんて誰も居なかったように、な。で、そういう情報の抜けている所を辿っていって、棺が沈められた可能性の高い時期を割り出してみると、プランナーが常々疑念を抱いていたある時期と一致したわけだ……聞いてんのか?」

「う、うん」

雅楽が生返事を返した。手を膝に置いて下を向き、ずっとテーブルの何も無い部分を見ている。足を揺すっているようで、椅子が小さくガタガタ鳴っていた。

「で……ここに、棺の有る場所と、引き上げ作業を開始する日時のメモが有る」

「……」

「部外秘なんだけど、雅楽君」

大和田は、メモを折ると、身を乗り出し、雅楽のコートのポケットに入れた。

「ね」

「あ……うん」

雅楽がゆっくり立ち上がった。

「気分が悪いから帰る……」

出口に行き着くまでに、テーブルや椅子や店員にぶつかって何度も転びそうになりながら、雅楽は店を出て行った。それを見届けると、大和田は携帯電話を取り出した。

「……はい、渡しました……ええ、賭けます?…………あは…………2人とも同じじゃあ、勝負にならないですね」

電話を切ると、大和田は立ち上がり、伝票を掴むと店の出口へと歩いていった。

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■蛇足2−邂逅−


「……見つけた」

「久しぶり」

「随分と探した」

「だと思ってた。待ってたよ」

「じゃあ、何故来たか、わかるのね」


「あの子はもう二度と歌わない」

「あなたがそう望んでいるからでしょう」


「……あの人は、生きて、絶望して、もがいて、死んでいった」

「私は知っている。全部知っているんだ」

「無かった事になんか、させない」

「無かった事に、していい、はずがない」

「だから……あなた、死んで」

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【終末後】終


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