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【My Life as a DOG】

■マスター・オブ・ライフ

CD−ROMは、自動的に再生されるようになっていた。

1つ目のファイルか開いた。見たことの無いビューワーが立ち上がって、良くわからない数式のようなものが、延々と画面上を流れ、唐突に終わった。

2つ目のファイルは、音声ファイルで、音楽のようなものが流れ始めた。
旋律も声も、定かではないが、それは確かに歌だった。

どこかで聞いた事がある。

『ボーダー・オブ・ライフ』

全く違うが、同じものだと解る。

「……」

浦谷部の表情が苦しそうに歪んだ。

(似てるけど、あれの比じゃないな)

先程の戦闘の影響で、今は2人とも、力が普段の何倍にも増している。そうでなければ、特に力を制御するのに長けている雅楽はともかく、確実に浦谷部は正気を保つ事ができなくなっていただろう。普通の人間なら、ひとたまりもない。

歌が止んだ。

3つ目、何の変哲も無いテキストファイルが立ち上がった。

『このファイルには、マスター・オブ・ライフについて記録してある。
 1つ目は、その力を再現する為の設計図
 2つ目は、その力である歌
 
 恐るべき力だ。
 だから私は、誰にも知られないように、すべてを封印する事にした。
 これがUGNに反逆する行為なのはわかっている。
 それでも、彼女には何も知らず、幸せに生きて欲しい。
 
 このCDを開き、このファイルを見ている人間が、正気でない事を願う。

 霧谷 雄吾』

全てのファイルが自動的に閉じられ、CDが排出された。
雅楽は取り出すと、ひらひら振ってみせた。

「浦谷部君これどうしたい?」

「何だか良くわかりませんけど……こんなものは、無い方がいいと思います」

「3つ目のテキストだけ貰っていい?これはいいでしょ。危なくないし」

「ええ、構わないです」

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雅楽は、浦谷部君に空のCDを貰ってテキストファイルだけコピーした。その後で、浦谷部君は、オリジナルのCDを割ってしまった。それを見届けると、雅楽はその場から立ち去った。

寝かしつけていたはずのリカちゃんがいつのまにか起きてきていて、歌を聴いてしまっていた事に浦谷部君が気付いたが、すでに、どうしようもなかった。

そして雅楽にはこのCDを誰に渡すのかという選択がつきつけられるのだったが、そんなもの選択もクソも無いのだった。PLはダメ絶対こっちダメて思うのだった。

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■選択

「と、いうわけで、協議の結果これだけもって帰ってきました」

「そうか、君はそういう選択をしたんだね」

「これがあれば良いんですよね?」

「ああ、これでいい」

「えーと、あの」

「何かな」

「餌なんですけど、他に方法ありましたよね?あの様子じゃ浦谷部君絶対にUGNについてくれないと思うんですけど」

「それはそれで構わないよ。これからは、新しい勢力は多いほうがいい」

「は?」

「そう、古い世代はそろそろ消えるべきだ」

「はい?」

言葉の意味を図りかねている雅楽の様子に、まったく頓着する事無く、ジューダスは、机の下から大きなボストンバッグを取り出し、雅楽に投げてよこした。中には、無造作にユーロ札が詰め込まれている。

「何ですかこれ」

「それは餞別だ。君はこれから休暇をとりたまえ。そうだな、最低でも3ヶ月」

「あの」

「僕はヨーロッパをオススメする」

「あー…………はあ、わかりました」

なんだかよくわからないまま、雅楽はジューダスの部屋を出た。

「なんなんだ……俺、クビになったのかな」

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「浦谷部君、これを受け取ったら、君はもうこの世には存在しなくなる」

「その方が、父さんも母さんも……」

「もう帰ってくるつもりが無いならね」

「……その方が、いいです」

大和田は、浦谷部に封筒を1つ手渡した。中には、パスポートと航空券が入っている。

「色々と、ありがとうございました」

「私は君の先生だったからね」

浦谷部は、リカの手を取ると、歩き出した。隣を歩いているリカが、何度も振り向いては手を振っているのが見えたが、浦谷部は振り向かなかった。

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雅楽はヨーロッパ方面へ。
浦谷部は中東方面へ。

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■……に伴う結末

3ヶ月、何事も無く過ぎた頃。
2人は大きなニュースを聞いた。

日本を巨大な地震が襲い箱根より西側が壊滅状態に陥った。
地面は沈下して低地は海に沈み何もかもずたずたに寸断されている。
被災者は総人口の40%にも及ぶ見込みである。
状況は刻々と悪化している。

さらに3ヵ月後、雅楽と浦谷部は、それぞれの理由で日本に戻る事になる。
そこで再び、大きな選択を迫られる事になるのだった。

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【My Life as a DOG】 終 ⇒ 【終末の獣】


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