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【My Life as a DOG】

■同一存在

「で、さ。浦谷部君」

「はい?」

雅楽の運転する車に乗って、二人は移動している。

「おびき寄せるのは良いんだけど、どっか良い場所あんの?俺は別にその辺でいいんだけど、困る人もいるでしょ。広くて、人のあんまり居ない場所がいいかな」

「……この辺なら、俺の通ってる高校のグラウンドか、河川敷。でも、俺、河川敷で何度かヤツを見かけてますから、あそこは、ヤツの縄張りの1つなんだと思います」

「じゃ、学校か。犬は居ないけど別なのが居るな。まあ丁度いいか」

ほどなくして、高校に到着した。
車を止めて、職員室に向かう。まだ人は少ない。
大和田は、普通に教師の顔でそこに居た。

「よう」

雅楽が声をかける。

「おはよう浦谷部君と、知らない人」

「はあ?」

「えーと、ああ、違うんだ」

大和田は、浦谷部に向かって大げさに手を振って見せた。

「名簿はそいつに脅されて仕方なく……」

真に迫った哀れっぽい声で、まだ何か言おうとするのを、雅楽が制した。

「もういいよ。そういうのは。おまえFHだろ?」

「あっれー?ばれちゃいましたかあ」

「この町で何してる?」

「UGNエージェントを消してます」

「そっか。犬は?」

「あー、あれ、ウチも困ってるんですけど」

「あのな、俺と浦谷部君はこれからその犬を倒さないといけないの」

「それは大変ですね」

「だろ。で、犬の後におまえに襲われると困る」

「でも、そうする事になると思いますよ。FHにとってこの町は重要な意味を持っています。UGNには一切入ってもらいたくない」

「おまえ犬をどうしたい?」

「そりゃまあ、サンプルくらいは取りたいですね」

「俺は別にこの町がどうなろうと知った事じゃないから、終わったら帰る。犬は置いていくから好きにしろ。おまえは邪魔しない。これでいいだろ」

「はあ、別に構いませんけど……浦谷部君はどうするのかな?」

「俺はUGNに入ったわけじゃないです」

「ならFHに?」

「……急に言われてもわからないし、今はどちらにつく気も無いです」

「じゃあ、同じだよ」

「俺も、出ていかなければ、ならないですか?」

「決めるべきだと思う」

「俺は……」

浦谷部の言葉をさえぎるように、周囲を何者かの気配が覆った。ワーディングだ。

「まだ餌撒いてないけど」

「……違いますね、あれは。昨日から暴れてるヤツですよ。ここらじゃわりと有名……だったんですけど、ねえ、あれ」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

彼の妻は、ジャーム化し、UGNに始末された。
彼は、妻の遺骨を加工した錠剤を飲む事で、擬似的にオーヴァードの力を得ている。
彼は、その力で、全てのオーヴァードを、オーヴァードになる可能性のあるものを憎み、殺し続けていた。

そして……

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浦谷部を殺した、竜胆優子の家に居た、男だったものが、校庭にのそりと現れた。

巨大なナメクジのような不定形の肉塊から、頭が、腕が、足が、胴体が、どのパーツだったのか既に判別のつかないものが、いくつもいくつも出鱈目に生え、それぞれに意思があるかのように、てんでばらばらに動いている。中央、斜めに突き出した、灰色のスーツを着た上半身には、浦谷部も、雅楽も見覚えがあった。ただ、首から上が欠けている。

「…………良い気分だ……やっと、同じになれた…………」

校庭に飛び出してきた浦谷部が、その姿を目の当たりにして立ちすくむ。おそらく、「それ」も、浦谷部を見て

「……見つけたぞ…………化け物……」

何処から発しているのか解らない、くぐもった声で言った。

「化け物は、おまえじゃないか。その体は……何人の人を、犠牲にしたんだ」

怒気をはらんだ浦谷部の言葉に、「それ」は何も応えない。

代わりに、体のあちこちの、発声器官のついているパーツが、一斉に音を立てる。高く、低く、長く、短く。不協和音が響く。笑っている。気付いて、浦谷部は、怖気立った。

「そうだ、同じさ。俺も、お前も。オーヴァードも、ジャームも。化け物だ。同じだ。私の妻は、殺された。ジャームは、殺されなければ、ならない、のか。なら、オーヴァードは。同じだ。化け物だ。だから」

「俺は、俺はあの時まだオーヴァードじゃなかった。その人たちも、違うんだろ!?」

「発症するかもしれない。実際、おまえは、そうなっただろう?」

「……人類の大半は感染済みで発症予備軍だぜ」

ようやく、学校の玄関口からゆうゆうと出てきた雅楽が、口を挟んだ。

「ああ、知ってる。殺すさ。全て」

「させない、そんな事」

めきめきと音を立てながら、何にも似ていない、真っ黒な獣の姿に、変わる。

「…………来いよ、化け物…………」

骨が断裂する音を、肉が引きちぎれる音を、悲鳴の様な音を、撒き散らしながら、すべてのパーツが、触手のように、伸びる。

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敵の初撃は≪伸縮腕≫で、エンゲージ外てゆうか校庭に出てすら居ない雅楽への攻撃。浦谷部君とあれだけ掛け合いしておいてずるいという抗議もむなしく雅楽は体に大穴あけつつ死んで、タイタス昇華で復活。

雅楽が≪静かなる霧≫≪禁息≫≪焦熱の弾丸≫で攻撃しつつ相手にダイスペナルティたくさん→≪完全獣化≫した浦谷部君の≪破壊の爪≫≪バリアクラッカー≫→様子見て雅楽がセカンドアクションでもう一撃。後々まで戦闘のたびに繰り返されるパターンであった。

相手の攻撃は主に浦谷部君が≪竜燐≫で受けるが受けきれない事も多い。てゆうか受けきれない事の方が多い。たまに後ろに攻撃がきて雅楽が大慌て。後々まで戦闘のたびに繰り返されるパターンであった。

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「おおおああぁあ!!!」

浦谷部が吼えた。
渾身の力をこめて爪を振り下ろす。
満身創痍だった。もう、これ以上は、無理かもしれない。

その切っ先に、見知らぬ人の顔面が押し出されるように現れた。

「!!」

思わず腕を止める。

ふたつの眼窩の片方にだけ、目玉が嵌っていて、確かに、浦谷部を、爪を、凝視している。呼吸に伴う、かすかな、爪の動きに併せて、目玉も、わずかに、上下に動く。その顔が、何か言おうとしたのか、ゆがんだ。声は、出ないようだった。

次の瞬間、その顔を炎が舐めた。炎は浦谷部の鼻先を掠め、またたくまに肉塊全体に広がり、顔も、パーツたちも、焼け落ちていく。

「おーい、しっかりしてよ。もう」

玄関口の階段に座り込んでいる雅楽がぼやいた。雅楽の後ろにいつのまにか大和田が立っている。浦谷部が、呆然と、立ち尽くす。眼前で、肉塊が激しく収縮した。

……ガリッ

何かを噛み砕くような音が、響いた。

ガリッ……ボリッ……

乾いた音をたてながら、燃え尽きつつあった肉塊が、ゆっくりと質量を取り戻していく。肉塊の中央が、裂けた。中には、ほとんど損傷を受けていない、男の首があり、何かを、盛んに咀嚼している。男は、浦谷部を、見た。

(…………来いよ…………化け物…………)

爪は振り下ろされた。
男の首がひしゃげ弾けとんだ。
肉塊は崩れ落ち溶けた。

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■犬再臨

爪を振り下ろした姿勢のまま、浦谷部は止まっていた。
足元を、じっと見ている。
やがて、その姿は、獣から人へと戻った。
下を向いたまま、ふらふらと、大和田の元へ歩み寄る。

「先生、俺、殺しました。人を……」

大和田は、黙って、浦谷部の肩を抱いた。

その横で、興味なさ気にしていた雅楽が、のそりと立ち上がった。大きく伸びをしながら、玄関の中に入っていき、ボストンバッグを持って出てくる。そのまま浦谷部と大和田の横を通り過ぎて、校庭に出る。バッグを開け、銀色の筒を取り出した。

それを見て、浦谷部も、大和田に軽く頭を下げ、再び校庭へと出てきた

「雅楽さん、それが?」

「はーい。餌でーす。今朝届きましたあ。浦谷部君スイッチ押す?」

いつも以上に軽い口調だった。
言葉も、態度も、心なしか上滑りしている。

雅楽は、浦谷部の返答を待たず、筒を地面に置く。
内容物が、表面の窓を横切った。

「……それって!?……え、それを、どうす」

雅楽が、表面のスイッチを押す。
乾いた音がして、筒が真ん中から半分に割れた。
液体が溢れて、地面にしみこんでいく。
筒の中に半分残った液体に、胎児が浮かんでいる。
残った液体も、ゆっくりと流れ出しつつあった。

手を伸ばそうとして、途中で止めた中途半端な姿勢のまま、浦谷部は凍りついたように止まっている。目を離す事が出来ない。何も、出来ない。


小さな口が助けを求めるように開く。
遠くから、応えるように、獣の遠吠えが聞こえた。

身じろぎしながら悲鳴を上げ続ける。
遠吠えは、尾を引きながら、凄い速さで近づいてくる。

すぐに動かなくなった。
遠吠えは止まった。


「そ、そんな……」

「ねー。趣味悪いねー」

『間に合わなかったか』

声とともに、二人の頭上に、翼を持った大きな黒い影が現れた。
影は、翼を維持したまま、巨大な猛禽類から、馬、犬へと、流れるように姿を変えた。

『それが、お前達のやりかたか?』

雅楽と大和田には、その言葉は低いうなり声にしか聞こえない。

「ちがう……」

浦谷部が叫んだ。

『俺を呼ぶために、殺してみせるとは』

「ちがう……」

『俺と同じ存在を』

「…………」

『リカと同じ存在を』

「!!」

胴体から数本の触手が伸び、犬はイカとのあいの子のような姿に変わった。触手で足元の地面を、確認するようにまさぐると、犬は静かに着地した。翼は背中に吸収されて消えた。

触手がのたうつ地面から、何かを咀嚼する音がする。
そこは、先程、男が死んだ場所だった。

『……ようやく、人間と言うものが理解できる』

咀嚼音が止んだ。

「人間の発声器官も作ることが出来るようになったな。これで、リカとも意思の疎通が図れる」

犬は、今度は人の言葉を発した。

「お前は一体……」

「俺は、生まれたときからこうだった。自分が何者なのかは知らない。本能は俺に生き残れと、子孫を残せという。だから従う。邪魔をするなら排除する」

「リカちゃんは……」

「元気にしている。あの子は俺の獣の見てくれではなく本質を見ている。あの子といれば、きっと俺は自分が何者なのか知る事が出来る」

「……リカちゃんは人間だ。お前と居てもあの子の幸せにはならない」

「そう思うか。なら、俺を殺して奪えばいい。獣というのはそういうものだ」

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雅楽は、定位置で大和田先生提供の麦茶を飲みながら浦谷部君を前回の戦闘と同じようにサポートするが、犬に邪魔者扱いされてちょっと傷つく。

再び≪完全獣化≫した浦谷部君はどうにもダイス運がよろしくなく大変だった。

もー頼むよーしっかりしてよーほんとにさーって何回も言った。

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■犬決着

浦谷部の爪が、犬に突き刺さる。そのまま深く沈みこみ、その体を貫通した。口にあたる部分から、低くうなり声が漏れた。

それは、すでに犬の形はしていなかった。
色々な動物を併せたような胴体から、触手がのたくっている。

犬の体組織を飛び散らせながら、浦谷部が爪を引き抜く。傷口にはぽっかり穴が開いている。その形は、急激に犬の形に戻ろうとしていた。だが、完全に変わりきる前に、自分の触手に沈み込むような形で、動きを止めた。目には、かすかに、光が残っている。

「……これで、終わりか。それもいいだろう」

「リカちゃんは……」

「リカは、あそこだ。お前なら見えるだろう」

犬が、目で、町外れの山を指し示した。かすかに、何かが光を反射している。

「……リカちゃんは、おまえの本質を見ているといった。おまえを恐れる事をしなかった、そういったよな」

「そうだ」

「それがおまえなんじゃないのか。答えは、最初から……」

「何?」

「どう言っていいかわからないけど……自分が何者なのか知りたいって、それも含めて……」

「……惜しいな。その考えを、検討する時間がない」

「…………」

「リカの居る場所の周りを探してみろ。面白いものがある。CDっていうのか?」

「…………」

「倒されたのがお前でよかった…………リカを頼む」

犬は、完全に、動かなくなった。

その脇で、雅楽が役目を終えた餌と入れ物をボストンバッグに適当に放り込む作業をしていると、電話がかかってきた。

「……終わりましたけど。あ、はい。なんかCDがあるとか……はあ、わかりました」

電話を切る。
浦谷部を見ると、人間の姿に戻っていた。表情は随分と明るい。

「雅楽さん、リカちゃんを迎えに行きたいんですけど」

「いいよ。車出すね」

雅楽は、そのまま駐車場へと歩いていく。浦谷部は後を追おうとしたが、立ち止まり、振り返った。

「大和田先生、お世話になりました」

「お礼はいいよ。私は君の先生だからね」

大和田に向かって、頭を下げる。大和田は、軽く手を上げた。
浦谷部はすぐに雅楽に追いついた。

「さっきの電話は?」

「ジューダスから。ご苦労様だってさ」

『ヤツは何か言っていたかい?』
『そうか、君と浦谷部君で中身を見て、どうするか決めるといい』

(あいつ、どこまで噛んでんだ……全部か……嫌になるな、もう)

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山の中でリカちゃんとCD−ROMを発見する。リカちゃんは何事も無かったかのように眠っていた。CD−ROMの中身を確認するために、2人はひとまず浦谷部君の家に向かった。

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エンディング・フェイズに続く


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